最近のもの

田原坂」は古典的名作で中公文庫で復刊されたもの。西南戦争の起こりから熊本城が解放されるまでの西南戦争前半を主に書いている。特に官軍の描写に詳しい。西南戦争の後半にも取りかかろうとして結局果たせなかったそうだが、もし書かれていたらどうなっていたか。田原坂は、官軍の砲兵が進むことができる唯一の道で、ほかの道を選ぶことはできず激戦は必至だったとか、初期に実は乃木部隊が田原坂を確保していたものの、稚拙な作戦指導でそこを放棄していたとか、勉強になる。
「稲の日本史」は考古学的な視点から日本の稲作をたどったもの。粗放的狩猟社会の縄文、稲作社会の弥生という単純な二分法に異を唱えている。特に、弥生時代になった瞬間に黄金の稲穂の世界になったというこれまでのイメージには批判的で、出土する弥生時代の稲は様々な種類が混ざっており、東南アジアの焼き畑農業と同じような形で、日本で通常イメージされるような稲作ではないんだとか。
「ティンカー…」は古典の名作だが翻訳の問題なのかとにかく読みにくい。原文がもともと読みづらいのだと思うが、新訳だというのに読んでいてすごくつっかかる。時制がいつの間にか変化していたり場面が変わっていたりと混乱させられる。
「シンパサイザー」は、ベトナム戦争で南軍の将軍とともにアメリカへ脱出した主人公である南軍将校が、実は北側のスパイだという設定がまず興味深い。アメリカへ脱出した主人公を含む南軍将兵が、母国を奪還するためにタイから再度侵入しようとして北側に捕まり、主人公の友人である北側の情報将校に尋問されるのだが、そのあたりからだんだん話の流れがよくわからなくなってくる。
「少女」は犯罪心理捜査官シリーズの第4弾。相変わらず面白いが主人公にはほぼ感情移入できないところも相変わらず。