ペスト

ペストペスト
カミュ Albert Camus 宮崎 嶺雄

新潮社 1969-10
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この本が発表された当初爆発的な反響を呼び起こしたというのは、おそらく発表が1947年という戦争の記憶がまだ生々しい時期であったことも理由の一つとしてあるだろう。ペストが街を襲って市は閉鎖され、死者の数が指数関数的に増大していく中でペストに対する民間の連帯が生まれ、やがてペストが終息し市は解放される、という流れは、そっくりそのまま第二次大戦に置き換えることができる。異邦人からペストへの一番大きな変化は、その連帯性の倫理有無であるわけだが、これは解説にも書いてあったが大戦中のレジスタンス活動が大きく影響を及ぼしていると考えられる。
わりと事実を淡々と描写する文体ながら非常に考えさせられる内容で、文章力と翻訳のうまさを感じた。