ひかりごけ

ひかりごけひかりごけ
武田 泰淳

新潮社 1992-04
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ひかりごけを始めとする短編中篇4編が収められている。
『流人島にて』は、昭和20年代八丈小島を舞台とし、15年前にある事件が元で島を去った男が島を再訪し、事件の当事者と再会する作品。少し恐ろしい話でもある。
『異形の者』は、主人公である僧侶が苦悩する作品。
『海肌の匂い』は、自主的な組合のようなものが組織されており、外部から「共産村」と呼ばれている漁村に嫁いできた女性が、村人と自分との間の断絶を感じ自分は異端者であると思う作品。
そして『ひかりごけ』は、雪と流氷に閉ざされた北海の洞窟の中でのカニバリズムを描いた作品。戦争末期、難破した輸送船の船長が2ヶ月ぶりに帰還し一時は英雄ともてはやされるものの、実は乗組員の人肉を食べて生き延びていたことが判明するという話。
どれもこれも重い話であるが、『流人島にて』が一番好き。