モオツァルト・無常という事

モオツァルト・無常という事モオツァルト・無常という事
小林 秀雄

新潮社 1961-05
売り上げランキング : 34332
おすすめ平均

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
全部で14編の批評が収録されている。しかし、雪舟とか鉄斎とか西行とか、ある程度教養として素地がないと書いてあることがあまりわかりません。書名にもなっている「無常という事」と、骨董品について書かれた「真贋」が面白かった。

上手に思い出すことは非常に難しい。だが、それが、過去から未来に向って飴の様に延びた時間という蒼ざめた思想(僕にはそれは現代に於ける最大の妄想と思われるが)から逃れる唯一の本当に有効なやり方の様に思える。成功の期はあるのだ。この世は無常とはけして仏説という様なものではあるまい。それは幾時如何なる時代でも、人間の置かれる一種の動物的状態である。現代人には、鎌倉時代の何処かのなま女房ほどにも、無常という事がわかっていない。常なるものを見失ったからである。(P.76)