神々は渇く

神々は渇く 神々は渇く
アナトール・フランス 大塚 幸男

岩波書店 1977-05-16
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フランス革命の動乱にまきこまれた純心な若者が断罪する側からされる側へと転じて死んでゆく悲劇を描いた歴史小説。人間は徳の名において正義を行使するには余りにも不完全だから人生の掟は寛容と仁慈でなければならない、として狂信を排した作者の人間観が克明な描写と迫力あるプロットによって見事に形象化されている。

フランス革命の恐怖政治の時期が舞台。主人公の画家の青年が、庇護を受けていた公爵夫人の働きかけで革命裁判所の陪審員に任命され、次々と反革命容疑者をギロチンに送る。最後には妹の夫、同居人、公爵夫人もギロチンに送ることになる。何かに憑かれたように次々と死刑の判決が下されていくのは空恐ろしくなる。最後にはテルミドール反動が発生し、ロベスピエールらと同じく主人公もギロチンにかけられる。
いわゆる「革命」の空恐ろしさを示していると思う。