万物は流転する

万物は流転する万物は流転する
ワシーリー・グロスマン 亀山 郁夫(解説)

みすず書房 2013-12-26
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1953年、スターリンが死んだ。神のような指導者の突然の死が、国土を震撼させる。ラーゲリ(強制労働収容所)からは何百万もの人びとがぞくぞく出所してきた。主人公イワン・グリゴーリエヴィチは自由を擁護する発言を密告され、29年間、囚人であった。かつて家族の希望の星だった育年は、老人となって社会に戻った。地方都市でささやかな職を得たイワンは、白髪が目立つが美しい女性アンナと愛しあうようになる。彼女には、ウクライナで農民から穀物を収奪し飢饉に追い込んだ30年代の党の政策に、活動家として従事した過去があった。生涯で一番大事なことを語りあうふたり。しかし…。作家グロスマンが死の床でも手離さなかった渾身の遺作。

「人生と運命」のグロスマンの著書。
スターリンの死後にラーゲリから数十年ぶりに釈放された男が主人公。久しぶりに社会に戻るが、実はラーゲリの外にも自由はなかったことに気がつく。また、男が出会った女性も、30年代のウクライナでの大飢饉に関わっていて、問わず語りにそのときのことを語る。
印象に残ったのが以下の部分。

死刑執行人に対する裁きはひとつ、犠牲者を人間とは見ないことで自分自身が人間ではなくなるのです。自分自身の中で人間を死刑にする、すなわち自分自身の死刑執行人になるのです。一方、殺された人は、どんな殺され方をしようと、永遠に人間としてとどまるのです。(p154)