続 羊の歌―わが回想

続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)続 羊の歌―わが回想 (岩波新書 青版 690)
加藤 周一

岩波書店 1968-09-20
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すべての自由を圧殺していた軍国主義は、1945年8月15日突然崩壊。著者は本郷の医学部にもどり再び研究生活に入る。やがて戦後文学の出発となった「一九四六年文学的考察」の発刊、フランス留学、アジア・アフリカ作家会議への参加と著者の足跡は広がり、折から起った日米安保条約反対の大運動はすべての日本人を巻きこんでゆく。

終戦から渡仏を経て安保闘争の頃まで。戦後すぐの広島での体験は強烈。また、京都に婚約者を残しながら渡仏し、オーストリア人女性と親しくなってついに京都に帰り別れを告げるあたりは感慨深い。結局は森鴎外から続く日本人知識人の典型パターンと言えるかもしれないが。
その京都の女性が、「結局(オーストリア人女性と一緒になってもそのうち別れるという意味で)一緒になるんだから」というのが、正鵠を得すぎていてこわい。
こういう知識人の戦前戦後の体験記を読むのは結構好き。