盗聴 二・二六事件

盗聴 二・二六事件盗聴 二・二六事件
中田 整一

文藝春秋 2007-02
売り上げランキング : 686254

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

昭和史最大の謎を載せた録音盤が回り始める。青年将校の叫び、名もなき兵士たちの苦悩、うごめく陸軍中枢…、七十年の時を越えて、いま甦る極限の人間ドラマ。

二・二六事件の前後、関係者の会話が傍受、録音されていた。NHKに残されていた録音版、また、陸軍法務官が残した関係資料も入手し、そこに残された傍受記録も使いながら関係者を訪ね歩き、様々な事実を発掘している。1979年にNHKのテレビ番組で放送され、そのころはまだ関係者も少しは存命だったようだ。松本健一北一輝のリアリズムとして評価している北から安藤輝三への電話も、法務官資料をもとに、北本人ではなく第三者が北を名乗って電話したものと結論づけている。
事件に出ていった機関銃中隊の下士官と、その上司の中尉との間の電話のやりとりが印象的。なんとか帰順させようとあの手この手で説得する中尉。会話の中には統帥権という単語も出てきたり、事件の首脳部を殺してしまえなどとも説得していて興味深い。その後、中尉はニューギニアで戦死、下士官は生き残り鹿児島で実業家として暮らしている。録音テープを聞いたときの元下士官の反応が印象に残った。