国家はなぜ衰退するのか:権力・繁栄・貧困の起源

国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)国家はなぜ衰退するのか(上):権力・繁栄・貧困の起源 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
ダロン アセモグル ジェイムズ A ロビンソン 鬼澤 忍

早川書房 2016-05-24
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繁栄を極めたローマ帝国はなぜ滅びたのか?産業革命イングランドからはじまった理由とは?共産主義が行き詰まりソ連が崩壊したのはなぜか?韓国と北朝鮮の命運はいつから分かれたのか?近年各国で頻発する民衆デモの背景にあるものとは?なぜ世界には豊かな国と貧しい国が生まれるのか―ノーベル経済学賞にもっとも近いと目される経済学者がこの人類史上最大の謎に挑み、大論争を巻き起こした新しい国家論。

包括的な制度と収奪的な制度に世界を二分し、包括的な政治制度、経済制度に恵まれた国が、経済的に発展していると論じている。包括的な制度をもつ国として、西欧諸国、アメリカ、日本などが挙げられ、収奪的な制度の国としては北朝鮮ソ連、サハラ以南の諸国、ラテンアメリカがあげられている。
収奪的な政治制度を持つと、エリートは国民から富を収奪することで自己の利益を最適化しようとするため、国民の間にイノベーションインセンティブがわかない。ただ、そのような制度化でも一定程度の経済発展をすることは可能で、例えばプランテーション農業の諸国や、旧ソ連で農業部門から工業部門へ強制的に人的リソースを振り分けたこと、また今の中国のように、後発のメリットを活かすことができる場合があげられている。ただし、そのような発展は持続性はないとも。
独裁下なのに長く経済発展しているシンガポールをどう見るのか本書には言及がないなど、気になるところもあるものの、全体として得るところが多かった。