決定版 - 日本人捕虜- 白村江からシベリア抑留まで

決定版 - 日本人捕虜(上) - 白村江からシベリア抑留まで (中公文庫)決定版 - 日本人捕虜(上) - 白村江からシベリア抑留まで (中公文庫)
秦 郁彦

中央公論新社 2014-07-23
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戦争で捕虜となった日本人の実像は解明が難しいテーマだった。史料は充分に存在せず元捕虜の口は重い。著者は世界各国で文献を渉猟し捕虜収容所跡を訪ねるとともに、二二〇人を越える元捕虜と遺族へ調査を重ねた。その努力の結晶ともいえる巨編。

白村江からとあるが、もちろん99%は明治以降の捕虜についての記述である。
日清、日露とたどるにつれて、昔からの武士道精神と、輿論の圧力から、徐々に捕虜がタブーとなっていくのがわかる。そして、ノモンハンでは将校を自決させるにいたり、そのまま太平洋戦争に突入する。
太平洋戦争で、開戦直後にフィリピンで捕虜となり、その後友軍によって救出された九十六式陸攻の乗組員たちが、徐々に死に誘導され、最後は自爆させられるくだりには唖然とする。
同様に捕虜をタブーとしていたのが旧ソ連というのが興味深い。旧ソ連は、督戦隊や強制収容所のシステムによる圧力で捕虜をタブーとしたが、日本では、特にそのような仕組みをつくらなくとも、同調圧力によってそれが達成されていたようだ。