中国とモンゴルのはざまで――ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢

中国とモンゴルのはざまで――ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢 (岩波現代全書)中国とモンゴルのはざまで――ウラーンフーの実らなかった民族自決の夢 (岩波現代全書)
楊 海英

岩波書店 2013-11-20
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「独立か、自治か、共治か」というせめぎあいの中にあった内モンゴルにおいて、内モンゴル統治の最高責任者だった男・ウラーンフー。日本敗戦後の国際情勢をどのように読み、いかなる意図の下にいかなる権利を中国に向かって主張したのか。一見矛盾に満ちているかのような彼の行動から、今も中国が抱える民族問題の根源をあぶり出す。

内モンゴル文革まで指導者として君臨したウラーンフーについての評伝。若い頃ソ連に留学し、スターリン型の民族自治を理想にしていたが、共産中国では自治共和国は認められず、区域自治に留まった。そのことを共産党幹部として肯定しながら統治を進めざるを得なかったことには、忸怩たるものがあったのではないか。漢民族が草原に入植し、開墾して次々と砂漠化させていくのを食い止めようとしたが、文革で失脚してしまった。
本人は失脚で済んでいるが、内モンゴルでは文革時期に粛正の嵐が荒れ狂って相当の犠牲者が出ていたのだとか。