幕末維新パリ見聞記――成島柳北『航西日乗』 栗本鋤雲『暁窓追録』

幕末維新パリ見聞記――成島柳北『航西日乗』 栗本鋤雲『暁窓追録』 (岩波文庫)幕末維新パリ見聞記――成島柳北『航西日乗』 栗本鋤雲『暁窓追録』 (岩波文庫)
井田 進也

岩波書店 2009-10-16
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徳川幕府崩壊とともに三一歳で隠居し、ヨーロッパを一民間人として漫遊した成島柳北(一八三七‐八四)。幕府外国奉行として渡欧した栗本鋤雲(一八二二‐九七)。祖国のために観察した現役の外交官鋤雲と、心の赴くままに漫歩した自由人柳北の、二つの西洋見聞録。

150年ほど前のパリの様子が描かれている。
成島柳北は、一民間人としてやたら観光しており、今日はどこどこ、明日はどこどこと、1日も欠かさずに記録しているのがすごい。フランスだけではなくイタリアにも旅をして旧跡を回っている。フランスに着くまでの船旅の様子も書かれているが、暇をもてあましていたのか、船旅中はやたら漢詩が多いものの、実際につくと見て回るのに精一杯なのか漢詩のペースが落ちる。日本人は左足が大きいとパリの靴屋に言われたり(刀を左に差していたからと推理している)しているのが面白い。
栗本鋤雲は幕府の役人として渡仏しているので、目の付け所が成島とは異なり、社会構造や当時の国際情勢などについてかなりふれている。元医者だからか、フランスには身体障害者が多いと見ていて、ただそれはそれだけ医療が発達しているからだとも見ている。他にも、ソースを「ソーヅと名付くひしお」と紹介したり、当時のフランス議会を見て老人ばかりだと見ていたり、こちらも面白い。