内奏―天皇と政治の近現代

内奏―天皇と政治の近現代 (中公新書)内奏―天皇と政治の近現代 (中公新書)
後藤 致人

中央公論新社 2010-03
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内奏―臣下が天皇に対し内々に報告する行為を指す。明治憲法下では、正式な裁可を求める「上奏」の前に行われた。戦後、日本国憲法下、天皇の政治関与は否定され、上奏は廃止、内奏もその方向にあった。だが昭和天皇の強い希望により、首相・閣僚らによる内奏は続けられる。天皇は「御下問」し、それは時に政治に影響を与えた。本書は、「奏」という行為から、天皇と近現代日本の政治について考える試みである。

戦後の内奏について特に興味深かった。戦後は芦田政権で一時閣僚の内奏が中止されるものの、第二次吉田政権で復活し、それが今に至っているとか。昭和期は、昭和天皇と保守政治家との個人的紐帯が伺えるが、平成に入ると徐々にその傾向はなくなり、逆に天皇の関心事項である災害などにシフトしているのが興味深い。