最近のもの

「日本の「アジール」…」は、いわゆるサンカと呼ばれる人たちを含む漂泊民について、著者が各地で聞き取りをしながらまとめたもの。昔そういう人たちがいたことを覚えている老人や、幼少期に自らがセブリをしていた老人などから聞き取りをしていてリアルに書かれている。昭和30年代頃まではそういう人たちがまだ各地にいて、箕の修繕などを生業にしながら暮らしていたとか。そういう人たちがいた地域では、いまだに差別感情も残っていることも書かれている。あと20年たったら書けない本だろう。
「ブックカフェを始めよう!」は関心を持ったので読んだが、軽い考えではなかなかうまくいかなそうなことがよく分かった。
「宮城…の謎」は時間つぶし用の本だが、明治初期の岩手県宮城県との区域変更の話などは興味深かった。
大塩平八郎・堺事件」は森鴎外の名作。大塩平八郎本人が、醒めながらも蹶起に至る心情が端的に書かれている。あっという間に鎮圧された後に関係者の処罰が行われるのだが、そのほとんどは牢死し、生きたまま処罰されたのは四人だけというのが恐ろしい。一度牢に入ったら生きて出られないということか。堺事件も淡々とした筆致で書かれている。どちらの事件も2月に起きている。
「白鯨」は何年も前に高円寺の古本屋で買っていたが読んでいなかったもの。衒学的な記述が多いが、注釈が丁寧で読みやすい新訳。スターバックとエイハブ船長との関係性が読ませる。