最近のもの

ピーター・トライアス「ユナイテッド・ステイツ・オブ・ジャパン」ハヤカワ文庫SF(中原尚哉 訳)
ケイト・アンダーセン・ブラウワー「使用人たちが見たホワイトハウス 世界一有名な「家」の知られざる裏側」(江口泰子 訳)
大岡昇平「堺港攘夷始末」中公文庫
栗田伸子 佐藤育子「興亡の世界史 通商国家カルタゴ講談社学術文庫
永積昭「オランダ東インド会社講談社学術文庫
新城道彦「朝鮮王皇族 帝国日本の準皇族」中公新書

「ユナイテッド…」は、第二次大戦で日独が勝利した世界のアメリカが舞台。「高い城の男」を思わせる。舞台設定は面白いが、執拗に残虐な記述が重ねられて辟易する。
「使用人たちが見たホワイトハウス」はホワイトハウス番記者が長年の取材をまとめたもの。ブッシュ家はホワイトハウスで働く人たちにとってはすごくやりやすい一方で、クリントンは関係が築きにくくやりにくい面があったらしい。大統領就任の日がホワイトハウスへの引っ越しの日で、朝に前大統領の荷物を搬出し、夕方には現大統領が元通り暮らせるように全て整えるらしい。
「堺港攘夷始末」は、森鴎外の堺事件への異議申し立てとして大岡昇平が史料をあたりながら書いたもので著者の絶筆。森鴎外が種本にしたものがそもそもバイアスがかかって書かれていることが明らかになる。事件当時の土佐藩が口裏合わせをしたことも浮かび上がってくる。
カルタゴ」は、カルタゴだけではなくフェニキア人全体について書いている。ハンニバル戦争のあたりは面白い。ローマを基本とする今の目から見ればカルタゴは異端児のようだが、当時の地中海ではメインプレイヤーだったことがわかる。
オランダ東インド会社」は17、18世紀のインドネシア史のようなものだが、エピソードがちりばめられていて面白い。日本とオランダの貿易についても書かれている。
「朝鮮王皇族」は、彼らがどのような経緯で王皇族になったのか、戦前だけでなく戦後の歩みも書いていて興味深い。併合当初は天皇詔書で王皇族が位置づけられていて法的な位置づけがなかったとか、宮内省と朝鮮統監府で所管争いがあったとか。