最近のもの
- 郄田里惠子「学歴・階級・軍隊 高学歴兵士たちの憂鬱な日常」中公新書
- 荒井信一「空爆の歴史 終わらない大量虐殺」岩波新書
- 柴田哲孝「TENGU」祥伝社文庫
- クセニヤ・メルニク「五月の雪」(小川高義 訳)新潮クレスト・ブックス
- 鎌田慧「空港 25時間」講談社文庫
- 坂井豊貴「多数決を疑う 社会的選択理論とは何か」岩波新書
- エリザベス・ウェイン「コードネーム・ヴェリティ」(吉澤康子 訳)創元推理文庫
「学歴・階級・軍隊」は10年ほど前に一度読んだが再読。著者の旧制高校への嫌悪感はなんなのだろうか。うまれた時代と自らが女性であることに強いルサンチマンを抱いているように見える。著者は、一時期はよく本を出していたが、最近は何をしてるんだろう。
「空爆の歴史」はゲルニカ、重慶、ドイツ、日本への空爆から、イラクへの空爆も含めて幅広く論じている。最初に飛行機を戦場で用いたのはイタリア軍!らしい。植民地で非対称的な戦争を行うための手段として飛行機は効果的だったのだとか。その構図は、近代国家同士の戦いだった第二次大戦を除き、今でも変わらない。
「TENGU」は何も考えずに読める小説。題材は面白いもののストーリー展開がややチープで先が読めてしまう。
「五月の雪」はロシア極東のマガダンを舞台にした短編小説がいくつか並んでいる。強制収容所への入口だった時代は去ったものの、まだその記憶が生々しいような時代のものから、2000年代を舞台としたものまでいろんな話が揃っている。アメリカに移住した娘夫婦をマガダン在住の女性が訪ねる短編が、幸せな娘夫婦や孫娘への複雑な気持ちが良く書かれていて心に残りました。
「空港」は鎌田慧のルポだが、パイロットや整備員、管制官など飛行機に携わる人たちにインタビューした内容をそのまま書き並べている。話されている内容はそれぞれ興味深いのだが、鎌田慧ならではの批判精神は全く見られず、ただ単に書き連ねるだけで、学生でもできそうな内容。自動車絶望工場を書いた人間とは思えない。著者は飛行機が好きらしいが、自分が好きなものを対象にすると舌鋒が鈍る好例ではないか。
「多数決」は、単純多数決がもつ欠点と、それを補うものとしての様々な手法を紹介している。3人候補者がいれば、1位に3点、2位に2点、3位に1点をつけてそれぞれ投票するとか。結構内容は難しいが、単純多数決ではなくてそのような手法を実際にとっている国もなくはないらしい。
「コードネーム・ヴェリティ」は第二次大戦中にドイツ占領下のフランスに潜入して囚われた女性無線電信士を題材にした小説。イギリスから、夜にフランスまで飛行機を飛ばし、レジスタンスの支援や人の行き来を密かに行っていたらしい。ゲシュタポの拷問の様子などおぞましいが、これがヤングアダルト文学として欧米で読まれているんだとか。